制度

優良な育成就労実施者とは|認定されると何が変わるか

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「優良」という言葉が出てくると、反応はたいてい二つに分かれます。一つは「表彰のようなものだろう」、もう一つは「余裕が出てから考えればよい」というものです。

どちらも、この仕組みの位置づけを外しています。優良と認められるかどうかは、受け入れられる人数そのものを動かします。また、評価されるのは申請の直前に整えられるものではありません。

枠が変わる仕組みで、後から取りに行くものではありません

先に構造を整理しておきます。

まず、認められると、受け入れられる人数の算定が変わります。別枠が用意されるのではなく、同じ算定式の係数が変わる形です。

次に、評価されるのは受け入れた後の運用です。原本が挙げている項目を見れば分かるとおり、書類の整え方が評価されるわけではありません。

そのため、初回の受入れの前に取れるものではありません。実績が評価の対象に入っているからです。優良は「受け入れてから取りに行くもの」であり、取りに行くのであれば、一年目の運用の設計に組み込んでおく必要があります。

何が変わるのか

原本の定めを見てください。出典は育成就労制度運用要領です。まず、基本の算定は次のとおりです。

一 申請者の常勤の職員(外国にある事業所に所属する常勤の職員及び育成就労外国人を除く。以下この条において同じ。)の総数に二十分の三を乗じて得た数(その数が三未満である場合には、零とする。)

続いて、優良と認められる場合の定めです。

二 前号の規定にかかわらず、申請者が次のイからヘまでに掲げる事項を総合的に評価して技能を修得させる能力につき高い水準を満たすと認められる者である場合にあっては、申請者の常勤の職員の総数に十分の三を乗じて得た数(その数が三未満である場合には、零とする。)

どちらも「常勤職員の総数に係数を掛ける」という同じ式で、係数だけが変わります。引用したのは受入れの形のうち一つですが、他の形についても、優良であることを条件に別の定めが置かれています。

ここから読み取っておくべき点が二つあります。

一つは、人数に比例することです。常勤職員が多い会社ほど、係数の違いから生まれる差は大きくなります。

もう一つは、下限の扱いがあることです。どちらにも「その数が三未満である場合には、零とする」という括弧書きが付いており、掛けた結果が一定に届かなければ枠は零になります。係数が変わるということは、この下限に届くかどうかの分かれ目も動くということです。規模の小さい会社では、ここが「受け入れられるか、そもそも零か」の違いになりえます。

具体的な人数の算定は、この記事では扱いません。原本の該当箇所には受入れの形ごとの表が置かれていますが、当社はその表を台帳に転記できていません。自社の人数を出すときは、原本を直接確認してください。

さらに条件が重なる枠もあります

原本には、もう一段の定めがあります。優良と認められたうえで、申請者の住所が告示で定める区域にある場合の定めです。監理を受ける形で受け入れるなら、監理を担う側にも高い水準が求められます。

この区域は「指定区域」と呼ばれ、原則は東京・神奈川・千葉・埼玉・愛知・京都・大阪・兵庫の8都府県以外の全域です。8都府県の中にも64の市町村が含まれます。詳しくは受入れ人数の上限の記事をご覧ください。

ただし、監理を受ける形で受け入れる場合、この枠にはいま実際には届きません。監理支援機関の側の「優良」は基準そのものが未公表で、施行日前申請と制度施行直後の申請受付も行わないと原本が明記しているためです。制度施行後の業務の実施状況を見て評価する、という段階にあります。

何が見られるのか

評価の項目は、原本に列挙されています。出典は同要領です。

 イ 技能及び日本語能力の修得に係る実績  ロ 育成就労を行わせる体制  ハ 育成就労外国人の待遇  ニ 出入国又は労働に関する法令への違反、育成就労外国人の行方不明者の発生その他の問題の発生状況  ホ 育成就労外国人からの相談に応じることその他の育成就労外国人に対する保護及び支援の体制並びに実施状況  ヘ 育成就労外国人と地域社会との共生に向けた取組の状況

六つの事項を「総合的に評価して」と書かれているとおり、どれか一つで決まる仕組みではありません。

項目の性質を分けて見ると、次のような層に分かれます。

層 項目 性質
結果 イ(技能と日本語能力の修得の実績) 受け入れた後でなければ存在しない
仕組み ロ(体制)・ハ(待遇)・ホ(保護と支援の体制と実施状況) 用意できるが、実施状況まで見られる
問題の有無 ニ(法令違反、行方不明者の発生その他の問題) 起きていないことが問われる
外向き ヘ(地域社会との共生に向けた取組) 社内だけでは作れない

イは、初回の受入れ前には存在しません。修得の実績なので、受け入れて、教えて、測った後にしか出てこないものです。

ニは、減らす側の項目です。積み上げるのではなく、起きていないことが問われます。そのため、取りに行く努力と、失わない努力は別物として考える必要があります。

ホには「実施状況」と書かれています。体制を作っただけでは足りず、実際に相談に応じた記録が要ることになります。

ヘは、社内では完結しません。地域社会との関わりなので、取り組みを始めるところから時間がかかります。

何点取ればよいのか

六項目は点数に落とされており、運用要領に配点の表があります。必要な点数は、受入れ実績の長さによって変わります。

出典:育成就労制度運用要領 参照する基準 総得点 必要点数
受入れ実績がない/初回受入れから1年未満 ★ 56点 40点以上
初回受入れから1年以上2年未満 ★〜★★ 72点 51点以上
初回受入れから2年以上3年未満 ★〜★★★ 85点 60点以上
初回受入れから3年以上 ★〜★★★★ 100点 70点以上

いずれも7割にあたります。実績が長くなるほど見られる項目が増え、総得点も必要点数も上がります。逆に言えば、実績が無くても40点を取る道はあり、「受け入れてからでないと優良は無理」というわけではありません。

ただし、7割を取るだけでは足りません。配点は次の4つの大項目に分かれています。

出典:育成就労制度運用要領 最大点 中身
Ⅰ 技能及び日本語能力の修得に係る実績 50点 技能試験・日本語試験の合格率、再受験率、技能検定等への協力、日本語学習の支援
Ⅱ 体制・待遇・実施状況 40点 人権方針、送出費用ゼロの措置、キャリア面談、賃金と昇給、住環境、母国語相談、優良な監理支援機関
Ⅲ 地域社会との共生 10点 地域交流と日本文化の機会、住民税の一括徴収・納税管理人、マイナ保険証の保有率
Ⅳ 法令違反・問題の発生状況 最大点の定めなし 改善命令の実績、行方不明者の数と割合、責めのある行方不明者の発生

Ⅳを除く各項目で、それぞれ6割以上を取る必要があります。Ⅰで稼いでⅢを捨てる、という取り方はできません。認定された後も同様で、7割と6割の両方を保ち続ける必要があると原本が明記しています。

Ⅳは、点を取る項目ではありません

Ⅳに最大点が書かれていないのは、減点と失格の項目だからです。内容は次のとおりです。

  • 直近過去3年以内の改善命令の実績があれば「優良適合不可」となります。点数の問題ではなく、その時点で不可です
  • 直近過去3年以内に、自社に責めのある行方不明者が発生していれば「優良適合不可」となります
  • 行方不明者の数と割合に応じて、最大で20点の減点があります(10%未満または1人以下なら0点、そこから2段階)

技能実習制度のときの実績も含まれます。育成就労になったからといって区切られることはありません。

Ⅱの6点は、当面は誰も取れません

Ⅱの中には「優良な監理支援機関の監理支援を受けていること」という項目があり、6点が置かれています。この6点は、いまの時点では取れません。監理支援機関の側の優良の基準が未公表で、申請の受付も行われていないためです。

40点・51点・60点・70点という目標を考えるときは、この6点を外して組み立ててください。

「取りに行く」なら、一年目から

六項目の性質を見れば、やるべきことの順番が見えてきます。

最初に作るのは、イのための仕組みです。技能と日本語能力の修得を「実績」として示すには、測った記録が要ります。何ができるようになったかを、期間を置いて比べられる形で残しておくことです。これは一年目の初日から始めないと、後からは作れません。評価を一つの総合点にまとめてしまうと、この記録は使いものにならなくなります。

→ 外国人社員の日本語を、何で評価すればよいのか|4つの軸

次は、ホの「実施状況」です。相談に応じる体制を作り、応じた事実を残します。生活相談員を置くことは別の要件で求められていますが、置いただけでは実施状況になりません。

→ 育成就労責任者・指導員・相談員|誰を選任すべきか

ニは守りの話です。行方不明者の発生が項目に入っているということは、人が定着しているかどうかが評価に含まれているということでもあります。

→ 転籍は防げません|人が入れ替わる前提で、受入れをどう設計するか

ヘは、いちばん時間がかかります。地域との関わりは、必要になってから作れるものではありません。

よくある二つの見方を、整理します

一つめは、「優良を取ってから、本格的に受け入れよう」という見方です。これは順番が逆です。イが実績の項目である以上、受け入れていない会社は評価の材料を持ちません。最初の受入れは、基本の枠で行うことになります。

二つめは、「枠が増えても、人が集まらなければ意味がない」という見方です。これは半分正しいのですが、六項目をよく見てください。待遇、保護と支援の体制、問題を起こさないこと、地域との関わりは、枠を増やすためだけの項目ではありません。人が残る職場の条件と、ほぼ同じものが並んでいます。

優良を目指す作業と定着の作業は、かなりの部分が重なっています。枠が増えなかったとしても、やったことは会社に残ります。

→ 日本人社員の側が変わらないと、定着しません

当社が確認できていないこと

この記事の範囲を、はっきりさせておきます。

  • 26ある項目の一つひとつは、この記事に並べていません。大項目と最大点、判断に効く点に絞っています。項目ごとの基準が必要な場合は、原本をご確認ください
  • 原本のテキストから読み取れない箇所が1つあります。Ⅰの⑦(育成就労開始から2年目終了までにA2相当の日本語能力試験に合格している者の割合)は、3段階のうち3つ目の値が原本のテキスト層に残っていません。最大点が4点であることは大項目の合計と★の段階の合計から確定していますが、3つ目の段階がいくつかは確認できていません
  • 優良な監理支援機関の基準は、原本にまだ書かれていません。「追って運用要領でお知らせします」という段階です
  • どの手続で、いつ、誰が優良かどうかを判断するのかは、この記事では扱っていません

確認できていないことを、他社の解説で埋めることはしていません。

経営者が明日できること

  • 「優良は後回し」という前提を、いったん外してください。実績が評価の対象に入っています
  • 技能と日本語能力の修得を、期間を置いて比べられる形で記録し始めてください
  • 相談に応じた事実を残す仕組みを作ってください。体制を作っただけでは実施状況になりません
  • 自社の常勤職員の総数を確認してください。係数の違いがどれだけの差になるかは、ここで決まります
  • 自社の所在地が指定区域に当たるかを確認してください。8都府県にあるなら、市町村名まで見る必要があります
  • Ⅳを点検してください。改善命令の実績と、責めのある行方不明者の発生は、点数ではなく一発で不可になります。ここだけは先に確かめておいてください

「優良」という言葉は、看板のように響きます。しかし実際に並んでいるのは、受け入れた人が技能と日本語を身につけ、相談でき、問題が起きず、地域の中で暮らせているかという項目です。看板の話ではなく、運用の話として扱ってください。


この記事で引いた原本

  • 育成就労法施行規則 第19条第1項第1号・第2号(人数の算定と、優良と認められる場合の係数)
  • 育成就労法施行規則 第19条第1項第2号イ〜ヘ(総合的に評価する六つの事項)
  • 育成就労法施行規則 第19条第2項第2号・第3号(他の受入れの形と、指定区域の定め)
  • 育成就労制度運用要領(六つの評価事項、指定区域の範囲、優良な育成就労実施者の配点方式と配点表、優良な監理支援機関の基準が未公表であること)

制度は改正されます。この記事の内容は時点注記の日付時点のもので、実際の判断にあたっては最新の条文と運用要領をご確認ください。人数枠の表そのものは受入れ人数の上限の記事で扱っています。


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本記事は2026年9月時点の法令・行政資料に基づきます。

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