育成就労責任者・指導員・相談員|誰を選任すべきか
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受入れの準備で、最初に人を動かす必要が出てくるのが役職の選任で、三つの役職を置くことになります。相談を受けていて気づくのは、この三つがひとまとめに扱われていることです。「誰か一人、担当を決めればよいのでしょう」と言われることも少なくありません。
実際には、三つとも向いている人が違います。加えて、決めるのに最も時間がかかる条件が一つあり、それが人選全体の締切を決めています。
三つは、担う仕事も、置ける人も違います
三つの役職は、監督する人・技能を教える人・生活の相談を受ける人に分かれています。役割が分かれている以上、一人の適任者を探すという発想では行き詰まります。それぞれについて、何を求められている役職なのかから考えてください。
そのうえで、三つに共通して効いてくる条件が一つあります。講習を先に受けておくことです。これは人を選べば済むものではなく日程の問題なので、いちばん先に動かします。
まず、名前を確かめてください
細かい話ですが、先に一点確認しておきます。三つめの役職の名称は「生活相談員」です。「生活指導員」と書かれた資料を見かけますが、原本の呼び方ではありません。よくある間違いなので、社内資料を作る前に直しておいてください。
これは名前だけの問題ではなく、「指導」と「相談」では役職の性格が違います。原本が求めているのは、生活面の相談に応じ、必要な助言をすることで、生活態度を正す役ではありません。ここを取り違えると、人選の基準が変わってしまいます。
三つは、担う仕事が違います
原本の定めから、三つの輪郭を並べます。出典は育成就労制度運用要領と育成就労法施行規則です。
| 何をする役職か | |
|---|---|
| 育成就労責任者 | 他の二人を含む関係職員を監督し、計画の進捗を管理する。計画の作成、技能と日本語能力の評価、届出・報告、帳簿の作成と備付け、受入れの準備、保護、労働条件・安全衛生、関係機関との連絡調整を統括管理する |
| 育成就労指導員 | 業務の技能を直接指導する |
| 生活相談員 | 生活面の相談に応じ、助言する |
責任者に並んでいる項目の幅を見ると、片手間で務まる役でないことが分かります。原本も「新人職員等の業務の経験が少ない者等を育成就労責任者に選任することは認められません」と述べています。
生活相談員については、原本が具体例を挙げています。職場の人間関係の悩み、地域のごみ出しや役所の手続、交通ルール、山や川での事故の防止、体調の管理などです。送出国では違法でないが日本では問題になりうることを、事前に伝えておく役でもあると書かれています。
また、相談員がすべてを自分で対応しなければならないわけではなく、補助者を付けることもできるとされています。一人に抱え込ませない設計が、原本の側から許されているということです。
事業所に所属している必要があるのは、二つだけです
三つのうち、現場に所属していなければならないのは指導員と相談員です。責任者については、原本が「育成就労を行わせる事業所に所属する者である必要はありません」と明記しています。
これは実務に直結する点で、本社の管理部門の人を責任者に当て、現場側に指導員と相談員を置くという組み方ができます。逆に、指導員と相談員を本社から兼ねさせることはできません。現場に人がいないなら、現場で人を作るしかありません。
兼務はできます。ただし要件は足し算です
よく聞かれるところですが、原本の【留意事項】に正面から書かれています。出典は同要領です。
○ 育成就労責任者、育成就労指導員及び生活相談員の兼務について 育成就労責任者、育成就労指導員及び生活相談員は、各々に求められる要件を備えた上で兼務することが可能です。
条件は「各々に求められる要件を備えた上で」という部分です。兼務すると要件が緩むわけではなく、両方の要件を満たす必要があります。同じ箇所には、共通要件と固有要件のほかに特段の資格等が求められるものではないとも書かれているので、新たに資格を取りに行く必要はありません。
事業所が複数あると、同じ人を使い回せません
拠点が複数ある会社は、ここを先に確認してください。指導員も相談員も、複数の事業所で同一の人を選任することはできません。二拠点で受け入れるなら、それぞれに置くことになります。
ただし原本は、逃げ道も用意しています。それぞれの事業所に適切に選任されていることを前提に、一つの事業所の指導員がリモートワーク等により他の事業所の指導に従事することは妨げられないとされています。相談員についても同じ書き方です。名義は各事業所に置き、実務の一部を融通するという形は認められていて、認められていないのは名義だけを一人に集めることです。
指導員については、もう一点あります。外国人と常に同じ時間帯・同じシフトで勤務することまでは求められません。ただし原本は「複数人選任する等の体制を整備することが望まれます」とし、あわせて深夜帯に外国人だけで業務を行うことは原則として想定されていないと述べています。交代制で受け入れるなら、この点は配置の設計に関わってきます。
いちばん先に動かすべきなのは、講習です
三つに共通する条件が、選任する役職に対応した講習を一定期間内に修了していることです。人選の締切を決めているのはこの条件で、適任者がいても講習を受けていなければ選任できません。講習は、思い立った日に受けられるものでもありません。
原本は、期限の数え方についても書いています。出典は同要領です。
規則に定める「過去3年以内」については、認定時を起算日として基準を満たす必要があります。また、認定時のみならず、認定後も継続して基準に適合する必要があります。
ここから読み取るべき点は二つあります。まず、起算するのは申請した日ではなく、認定の時点です。次に、認定の後も満たし続ける必要があります。そのため原本は、残りの期間が短い修了証明書を出さないよう求め、過去に提出したことがあっても申請ごとに提出することを求めています。
一度受ければ終わりではなく、期限の管理が続くということです。名簿に修了日を書いておき、期限が切れる前に次を手配するところまでを仕組みにしてください。
当分の間の取扱いとして、技能実習の制度で必要な養成講習を受けていれば足りる、という経過措置も置かれています。すでに技能実習で受け入れている会社は、手元の修了証明書が使えるかどうかを先に確認してください。使えるなら、人選の締切は大きく動きます。
原本が定めている要件
ここまで、意図的に数字を出してきませんでした。要件の細目は改正されうるので、記事の骨格に入れないほうが安全だからです。そのうえで、いま原本に書かれている内容を一か所にまとめます。出典は育成就労法施行規則と育成就労制度運用要領です。
三職に共通するものは、次のとおりです。
- 育成就労実施者またはその常勤の役員もしくは職員であること
- 法第10条第1号から第10号の欠格事由に該当しないこと
- 未成年者でないこと(認定時において18歳未満の者でないこと)
- 選任する役職に対応する講習を、過去3年以内に修了していること(経過措置あり)
育成就労指導員に固有のものは、次の二つです。
- 育成就労を行わせる事業所に所属していること
- 従事させる業務において要する技能について、5年以上の経験を有していること
この経験の数え方について、原本は三つのことを書いています。起算点は育成就労計画の認定申請の時点であること、自社での経験に限られず他の機関での経験年数も含められること、常勤職員としての勤務経験にも限られないことです。ただし「当該業務に必要な技能に習熟していると認められる程度の実務経験が必要」とされています。
望ましい要件として、当該分野・業務区分での経験や、指導対象となる技能検定等の2級合格者であることが挙げられていますが、これらは要件ではありません。
生活相談員に固有のものは、次のとおりです。
- 育成就労を行わせる事業所に所属していること
育成就労責任者に固有のものは、次のとおりです。
- 自己以外の育成就労指導員、生活相談員その他の関与職員を監督することができる立場にあること
提出する書類は、育成就労計画認定申請書、三職の就任承諾書・誓約書・履歴書、講習の修了を証明する書類の写しです。常勤性は履歴書等の様式で確認し、原則としてそれ以外の資料提出は不要とされています。なお、移籍型出向者も常勤職員として扱うことができると書かれています。
人選が行き詰まる、三つの理由
一つめは、指導員から探してしまうことです。経験年数の要件があるため、三つの中では指導員の候補がいちばん絞られます。ただし締切を決めているのは講習のほうです。候補が絞られる役職と、時間がかかる条件は別物なので、両方を同時に動かしてください。
二つめは、責任者を現場に置こうとすることです。所属の要件が無い役職なので、現場から出す必要はありません。統括管理の幅を考えれば、むしろ現場から出すほうが無理のある役です。
三つめは、相談員を「面倒を見る人」として選んでしまうことです。求められているのは相談への対応と助言なので、世話好きかどうかではなく、相談を受けたときに抱え込まず、適切な先へつなげるかで選んでください。補助者を付けてよいと原本に書かれているのも、そのためです。
生活の相談は、多くの場合、日本語で行われます。ただ、相談できる関係があるかどうかは、日本語力だけでは決まりません。
経営者が明日できること
- 社内資料の「生活指導員」を「生活相談員」に直す
- 講習の空き状況を、いま確認する。人選の締切を決めているのはここです
- 技能実習で受け入れている場合は、手元の養成講習の修了証明書が使えるかを確認する
- 責任者を本社側から出せないか検討する。事業所への所属は求められていません
- 受け入れる事業所が複数あるなら、指導員と相談員を事業所ごとに立てる
- 修了日と期限を書いた名簿を作り、期限の前に次を手配する担当を決める
- 相談員に補助者を付けるかどうかを、選任と同時に決める
三つの役職は、書類を通すために置くものではありません。誰が監督し、誰が教え、誰が相談を受けるかを決める作業です。その三つが決まっていない職場では、結局いちばん近くにいる人に全部が集まってしまいます。
この記事で引いた原本
- 育成就労法施行規則 第15条第1項第1号〜第3号、第16条、附則第4条(三職の要件と経過措置)
- 育成就労制度運用要領(共通要件、三職の対比、兼務の可否、複数事業所の扱い、「過去3年以内」の起算、生活相談員の職務、確認対象の書類)
制度は改正されます。この記事の内容は時点注記の日付時点のもので、実際の選任にあたっては最新の条文と運用要領をご確認ください。
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