費用と手続き

育成就労にかかる費用の全体像

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「育成就労は、1人あたりいくらかかりますか」

この問いに、制度の原本は答えていません。金額はどこにも書かれておらず、代わりに書かれているのは、誰が払うのかと、何を根拠になら取れるのかです。

見積もりを作るなら、まずこの骨格を押さえるほうが早いでしょう。金額は相手によって動きますが、骨格は制度で決まっているからです。

費用は、3つの向きに分かれます

出典:育成就労法施行規則・育成就労制度運用要領/向き 誰が誰に払うか 制度の定め
一 育成就労外国人本人 → 外国の送出機関 上限がある(報酬月額の2か月分)
二 受入企業 → 監理支援機関 4つの区分の実費に限る(それ以外は取れない)
三 誰からも取ってはいけないもの 違約金・保証金・財産の管理

本人が払えるのは送出機関への費用だけで、それにも上限があります

条文は省令にあります。

(送出機関に支払った費用の額の基準) 規則第 21 条 法第九条第一項第十一号(法第十一条第二項において準用する場合を含む。) の主務省令で定める基準は、育成就労計画に記載された報酬の月額に二を乗じて得た額を 超えないこととする。

「報酬の月額に二を乗じて得た額」とは、2か月分のことです。

この「報酬」が何を指すかも定義されています。出典は育成就労制度運用要領です。

○ 育成就労外国人が外国の送出機関に支払う費用の上限は、育成就労計画に記載 された報酬の月額の2か月分の金額とされており、ここでいう「報酬」とは、育成就労外 国人が育成就労実施者と締結した雇用契約で定められた給与等から算出した所定内 賃金の月額を指します。この上限額を超える金額については、育成就労外国人に負 担させることはできません。なお、この規定は育成就労外国人の経済的な負担を軽減 することを目的としていることから、この規定にかかわらず、育成就労外国人が送出機 関に支払う費用は、最小限に抑えることが望まれます。

出典:育成就労制度運用要領 中身
上限 育成就労計画に記載された報酬の月額の2か月分
ここでいう「報酬」 雇用契約で定められた給与等から算出した所定内賃金の月額
書式上の位置 雇用契約書及び雇用条件書(参考様式第1-2号)の「2.雇用条件」の項目「Ⅶ.賃金」の項番3に記載する金額

時給や日給で定めている場合に月額へ直す換算式も、あわせて置かれています。

1 時給で示されている場合 時給×1日の所定労働時間×1か月の平均所定労働日数 2 日給で定められている場合 日給×1か月の平均所定労働日数

出典:育成就労制度運用要領 月額の算式
時給で示されている場合 時給 × 1日の所定労働時間 × 1か月の平均所定労働日数
日給で定められている場合 日給 × 1か月の平均所定労働日数

上限そのものの詳しい扱いは送出機関への手数料の記事で扱っています。ここで押さえておきたいのは、この上限が何を数えているかという点です(出典:育成就労制度運用要領)。

上限が数えるのは「一切の費用」です

ここを取り違えると、見積もりが崩れます。

○ この規定による規制の対象となる育成就労外国人が送出機関に支払った費用の範 囲については、その費目を問わず、送出しの過程で育成就労外国人が送出機関に支 払った一切の費用が対象となります。想定される費目の例としては以下のものが挙げら れます。

費目は問われず、運用要領は例として次の8つを挙げています。

出典:育成就労制度運用要領 費目の例
1 送出手数料・職業紹介費
2 医療費・保険料、健康診断費用
3 技能・資格検定費
4 職業訓練・研修・日本語講習費
5 旅費・宿泊費(国内移動費)
6 渡航費
7 旅券・査証申請費用
8 一般管理費

日本語講習費も渡航費も、この2か月分の中に入ります。上限の対象になるのは手数料だけではありません。本人が送出機関に直接払っていない分も、次のように対象に含まれます。

○ 育成就労外国人が送出機関に直接支払っていない費用でも、送出機関と実質的に 一体となって活動する機関への支払いなど、送出機関への支払いと同視できる費用 はこの規定による規制の対象となります。送出機関への支払いと同視できる費用の例 としては、以下の費用が想定されます。 ・ 送出機関からの委託や送出機関との連携により実施される教育機関における育成 就労外国人の職業訓練・研修・講習のための費用として、当該育成就労外国人が教 育機関に支払った費用 ・ 送出機関からの委託や送出機関との連携により実施される仲介人による人材募集 に係る費用として、育成就労外国人が仲介人に支払った費用

出典:育成就労制度運用要領 同視される支払い
1 送出機関からの委託や連携により実施される教育機関での職業訓練・研修・講習の費用として、本人が教育機関に支払ったもの
2 送出機関からの委託や連携により実施される仲介人による人材募集の費用として、本人が仲介人に支払ったもの

そのため、「送出機関には手数料しか払っていない」という説明では足りません。本人が本国で、送出機関につながる相手に払ったものは合算されます(出典:育成就労制度運用要領)。

超えた分は、受入れ側が負担します

上限を超えた費用が消えるわけではなく、負担する人が移ります。出典は育成就労制度運用要領です。

○ この規定は、監理型育成就労において育成就労外国人が外国の送出機関から取次 ぎを受ける場合に、育成就労外国人が外国の送出機関に支払う費用の上限を定めて いるものです。これは、送出機関による育成就労外国人からの不当に高額な費用の徴 収を防止した上で、送出しに要した費用が法定された上限を超える場合には、超過分 を受入れ側が負担することにより、本邦に入国しようとする育成就労外国人の経済的 負担を軽減するとともに、当該費用の適正化に資することを目的としています。

運用要領には「超過分を受入れ側が負担することにより」と書かれています。送出しにかかる実費が2か月分を超える国・職種であれば、その差額は受入企業のコストとして見積もりに入ります。

この規定には、期限もありません。

○ 育成就労計画の認定時点では育成就労外国人が送出機関に対して費用を支払っ ていなかったとしても、育成就労計画の認定後にこの規定に違反する費用を育成就労 外国人が支払った場合は、育成就労計画の認定の取消しの対象となります。

認定のあとに本人が払った場合も、認定の取消しの対象になります。入国時点で1回確かめれば済むものではない、ということです。

外国通貨は、レートが指定されています

○ 外国通貨で支払われた費用の円換算は、各年度において財務省で公表している出 納官吏レート(一覧表を機構ホームページに掲載)のレートと同じレートとしますので、同 レートを参照し円換算してください。

換算に使うのは各年度において財務省で公表している出納官吏レートで、申請者が任意のレートを選ぶことはできません。見積もりを外貨で受け取っている場合は、社内の換算レートと合わないことがあります。

監理支援機関に払う費用は、4つの区分の実費に限られます

監理型で受け入れる場合は、監理支援機関に払う費用が加わります。ただし、取れるものは限定されています。

出典:育成就労法施行規則 第56条 何に対する費用か
職業紹介費 雇用関係の成立のあっせんに係る事務に要する費用(募集及び選抜に要する人件費、交通費、外国の送出機関へ支払う費用その他の実費に限る)
講習費 入国前講習及び入国後講習に要する費用(施設使用料、講師及び通訳人への謝金、教材費、本人に支給する手当その他の実費に限る)
監査指導費 監理支援に要する費用(監査及び指導に要する人件費、交通費その他の実費に限る)
その他諸経費 その他育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に資する費用(実費に限る)

4つの区分のすべてに「実費に限る」がかかっています。内訳の読み方は監理支援機関の費用は何に対して払うのかの記事で扱っています。

送出機関へ支払う費用は、このうち職業紹介費の中に入ります。先に見た「本人が送出機関に払う費用」とは別の流れで、同じ相手にお金が届くものの、払う人も根拠も異なります。

誰からも取ってはいけない費用があります

送出機関の要件の中には、禁止される行為が並んでいます。

イ 育成就労に関連して、保証金の徴収その他名目のいかんを問わず、育成就労外国人 等又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他育成就労外国人等と社会生活に

                 4-137
 おいて密接な関係を有する者の金銭その他の財産を管理する行為
ロ 育成就労に係る契約の不履行について違約金を定める契約その他の不当に金銭その
 他の財産の移転を予定する契約をする行為
出典:育成就労法施行規則 第20条第8号 禁じられている行為
イ 保証金の徴収その他名目のいかんを問わず、本人等の金銭その他の財産を管理する行為
ロ 契約の不履行について違約金を定める契約その他の不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約をする行為

これは、受入れ側にかかる禁止と同じ内容です。違約金がなぜ成立しないのかは違約金を定める契約の記事で扱っています。

送出機関の側には、額の上限も課されています。出典は育成就労制度運用要領です。

○ 育成就労外国人等から一定額以上の費用を受領することの禁止(規則第 20 条第8号ハ) 送出機関は、育成就労外国人の月額賃金の2か月分を超える金額について、費目を問わ ず、育成就労外国人はもとより、その配偶者、直系又は同居の親族その他当該育成就労外国 人等と社会生活において密接な関係を有する者からも受領することが禁止されています(詳細 は第 14 参照)。

「費目を問わず」「配偶者、直系又は同居の親族その他……密接な関係を有する者からも」受領することが禁じられており、本人の家族から取る形も封じられています。

供応接待も禁止されています。

○ 供応接待等の禁止(規則第 20 条第8号ヘ) 送出機関は、育成就労実施者、育成就労実施者になろうとする者、監理支援機関、監理支 援事業を行おうとする者に対して、社会通念上相当と認められる範囲を超えて、金銭、物品そ の他財産上の供与や供応接待又はそれらの申込みや約束を行うことが禁止されています(詳 細は第6(14)参照)。

受入企業や監理支援機関が、送出機関から接待を受けることも対象になります。見積もりの話からは外れますが、費用の周辺で起きやすい問題として挙げておきます。

費用が公表されることになっています

送出機関の要件のひとつに、公表があります。

○ 送出機関が徴収する費用等の公表(規則第 20 条第4号) 送出機関は、その名目のいかんを問わず、送出機関が育成就労外国人から徴収する額、そ の費用項目及び算出基準について、インターネットを利用して公衆の閲覧に供する方法により 公表する必要があります。

方法はインターネットを利用して公衆の閲覧に供する方法とされ、額だけでなく、費用項目と算出基準まで公表することが要件になっています。

ただし、そもそも取次ぎを受けられる送出機関が限られています。

○ MOC 作成国等の情報、外国政府認定送出機関のリスト等については、順次、機構ホ ームページで公表します。育成就労計画の認定申請を行う場合には、送出しを考えて いる外国政府認定送出機関リストに送出機関名があるかを確認してから申請してくださ い。 同リストに記載がない送出機関から取次ぎを受けたものについては、育成就労計画 の認定を受けることができません。

外国政府認定送出機関のリストに記載がなければ、育成就労計画の認定を受けられません。リストは機構ホームページで順次公表されるとされています。

見積もりを作るときの順番

制度の骨格からすると、見積もりは次の順に決まっていきます。

順 決めること 効いてくる定め
1 雇用条件書の項番3(所定内賃金)の月額 本人が払える上限が、ここから決まります
2 本国で本人が払う費用の総額 費目を問わず一切が対象。同視される支払いも合算
3 1の2か月分を超える分 受入企業の負担になります
4 監理支援機関の料金表の4区分 実費に限る。区分外の請求は根拠がありません
5 外貨建ての分の換算 出納官吏レート

1が決まらないと2以降が確かめられないため、まず賃金を決めることが先になります。

当社が確認できていないこと

  • 金額の相場は、原本にありません。制度の原本が定めているのは上限と区分だけで、実際にいくらになるかは書かれておらず、当社も相場データを持っていません
  • 外国政府認定送出機関のリストは、まだ公表されていません。「順次、機構ホームページで公表します」という段階で(出典:育成就労制度運用要領)、どの送出機関から取次ぎを受けられるかは、現時点では確認できません
  • 二国間取決め(MOC)の本文にも到達しておらず、どの国と作成済みかも原本にはありません
  • 出納官吏レートの一覧表は取得できていません。財務省の公表資料で、機構ホームページに掲載されるとされています
  • 転籍時の費用の按分については、基礎となる額を定める告示がまだ制定されていません。詳細は転籍時の費用の記事で扱っています
  • 「所定内賃金」の説明は、原本の中で字面が衝突しています。含まれるものの列挙に「超過勤務手当含む」とあり、除かれるものに「所定の労働時間を超える労働に対して支払われる給与」とあります。原本は続けて雇用条件書の項番3という具体的な位置を指しているため、実務上はそこで確定します
  • 参考様式第1-2号(雇用契約書及び雇用条件書)・第1-10号(本国で支払った費用の申告書)の現物は取得できていません

経営者が明日できること

  1. 雇用条件書の項番3に入る金額を、先に決めておきます。本人が払える上限も、超過分の自社負担も、ここから逆算されます。
  2. 本人が本国で払う費用の内訳を、費目ごとに出してもらいます。手数料だけでなく、健康診断も日本語講習も渡航費も上限の対象です。
  3. 教育機関や仲介人への支払いが別にないかを確かめます。送出機関と委託・連携の関係にあれば、合算されます。
  4. 監理支援機関の料金表を、4つの区分に並べ直します。区分に収まらない項目があれば、根拠を聞いてください。
  5. 外貨建ての見積もりを、社内の換算レートで固めないようにします。制度が指定しているのは出納官吏レートです。

「いくらか」を先に聞くと、比べられない数字が並びます。先に骨格を決めてから金額を当てはめれば、同じ条件で比べられるようになります。

制度は改正されます。この記事の内容は時点注記の日付時点のもので、実際の判断にあたっては最新の条文と運用要領、および分野別運用方針をご確認ください。

この記事で引いた原本

  • 育成就労法施行規則 第21条(送出機関に支払った費用の額の基準)
  • 育成就労法施行規則 第20条第4号・第8号イ・ロ・ハ・ヘ(外国の送出機関の要件と禁止行為)
  • 育成就労法施行規則 第56条(監理支援費の種類・額・徴収方法)
  • 育成就労制度運用要領(「報酬」=所定内賃金の意味と換算式、費用の範囲と同視される支払い、超過分の負担、認定後の支払いと取消し、外国通貨の換算、外国政府認定送出機関のリスト、費用の公表義務)

いずれも法令の原本および制度の運用要領から引用しています。制度は改正されるため、実際の手続きにあたっては、最新の条文と要領をご確認ください。

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本記事は2026年9月時点の法令・行政資料に基づきます。

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