送出機関への手数料|本人負担の上限は報酬月額の2か月分
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受け入れる側からいちばん見えにくい費用は、本人が来日する前に送出国で支払った費用です。
金額は本人と送出機関のあいだで決まり、請求書がこちらに来るわけでもないため、「いくら払ってきたのか」を知らないまま受け入れることになりがちです。しかし、この費用には上限が定められており、上限の根拠がどこにあるかを取り違えている資料も少なくありません。
上限は省令で定められています
本人が外国の送出機関に支払う費用の上限は、育成就労計画に記載された報酬の月額の2か月分です。出典は育成就労法施行規則と育成就労制度運用要領です。
根拠は育成就労法施行規則 第21条で、法律(育成就労法 第9条第1項第11号)は省令への委任のみを定め、金額そのものは書いていません。出典はこの規則と育成就労制度運用要領です。
押さえておくべき点は、次の三つです。
- 二国間の取決めではなく、省令で定められている
- 方針段階ではなく、公布済みの確定値である
- 上限を超えた分を、本人に負担させることはできない
条文を確認する
法律の側は次のようになっています。出典は e-Gov の育成就労法です。
育成就労法 第9条第1項第11号は、外国の送出機関から取次ぎを受けた外国人について、当該外国人が送出機関に支払った費用の額が、育成就労外国人の保護の観点から適正なものとして主務省令で定める基準に適合していることを、育成就労計画の認定基準として定めています。
金額を定めているのは省令の側です。出典は育成就労制度運用要領です。
規則第 21 条 法第九条第一項第十一号(法第十一条第二項において準用する場合を含む。)の主務省令で定める基準は、育成就労計画に記載された報酬の月額に二を乗じて得た額を超えないこととする。
この「報酬の月額に二を乗じて得た額」が上限になります。
「報酬」が何を指すか
運用要領に説明があります。出典は同要領です。
育成就労外国人が外国の送出機関に支払う費用の上限は、育成就労計画に記載された報酬の月額の2か月分の金額とされており、ここでいう「報酬」とは、育成就労外国人が育成就労実施者と締結した雇用契約で定められた給与等から算出した所定内賃金の月額を指します。この上限額を超える金額については、育成就労外国人に負担させることはできません。なお、この規定は育成就労外国人の経済的な負担を軽減することを目的としていることから、この規定にかかわらず、育成就労外国人が送出機関に支払う費用は、最小限に抑えることが望まれます。
ここから読み取れることは三つあります。
まず、基準になるのは「所定内賃金の月額」で、残業代や手当を含んだ総支給額ではありません。
次に、超過分は本人に負担させられません。「上限を超えた分は本人が納得して払った」という整理は成り立ちません。
さらに、上限は目標ではありません。運用要領は「最小限に抑えることが望まれる」と書いており、上限いっぱいまで許容されているという読み方は、原本の書きぶりと合いません。
超過分は、誰が払うのか
上限を超える費用が実際にかかった場合に誰が負担するのかについて、運用要領は、制度の趣旨を説明する文の中で、超過分を受入れ側が負担すると述べています。出典は同要領です。
この規定は、監理型育成就労において育成就労外国人が外国の送出機関から取次ぎを受ける場合に、育成就労外国人が外国の送出機関に支払う費用の上限を定めているものです。これは、送出機関による育成就労外国人からの不当に高額な費用の徴収を防止した上で、送出しに要した費用が法定された上限を超える場合には、超過分を受入れ側が負担することにより、本邦に入国しようとする育成就労外国人の経済的負担を軽減するとともに、当該費用の適正化に資することを目的としています。
ただし、この記述はあくまで規定の趣旨を説明する文の中にあります。受入れ側の誰が、つまり育成就労実施者なのか別の機関なのか、負担義務を負う者を名指しした規定は、原本からは確認できていません。
原本で確認できるのは、本人には負担させられないことと、超過分を受入れ側が負担するという制度設計の説明があることの二点だけです。契約の段階で、誰が何を負担するかを書面で明確にしておいてください。
送出機関の側にも、禁止があります
上限は、本人の支払いだけを縛るものではなく、受け取る側にも規定があります。
運用要領によれば、送出機関は、育成就労外国人の月額賃金の2か月分を超える金額について、費目を問わず、本人はもとより、その配偶者、直系または同居の親族、その他その外国人と社会生活において密接な関係を有する者からも受領することが禁止されています。出典は同要領です。
実務上重要なのは、「本人ではなく家族が払った」という形も禁止の対象に含まれていることです。名目を変える、費目を分ける、親族を経由する、といった方法は、いずれも回避になりません。
上限をめぐる、三つの取り違え
「二国間の取決めで決まっている」という取り違え
上限は二国間の取決めではなく、省令で定められています。二国間取決めに何が書かれているかは、原本を取得していないため、この記事の根拠には含めていません。上限の根拠を聞かれたら、育成就労法施行規則 第21条と答えてください。
「まだ方針の段階で、確定していない」という取り違え
上限は省令として公布済みで、今後の制定を待つ性質のものではありません。
同じ育成就労の制度でも、転籍時の費用の補填については、額を定めるものがまだ制定されていません。この二つを混同しないようにしてください。
→ 転籍時の費用は誰が負担するのか|按分の仕組みと、まだ決まっていないこと
「本人が納得していれば、上限を超えてもよい」という取り違え
この考え方は成り立ちません。本人に負担させられないという禁止と、送出機関が受領できないという禁止の、両方が働くためです。
受入れ側が確認しておくこと
制度の話を、自社の段取りに落とし込むと次のようになります。
まず、本人が実際に支払った額を把握します。把握していなければ、上限を超えているかどうかも分からないため、受入れの段取りの中に確認する手順を入れてください。
次に、誰が何を負担するかを書面にします。送出機関、取次ぎを担う機関、自社について、費目ごとに書き分けます。口頭の了解は、後で食い違いがちです。
あわせて、上限額の計算根拠を残します。基準になるのは所定内賃金の月額なので、計算に使った額と、その根拠になる雇用契約の条項を記録しておいてください。
そのうえで、上限いっぱいを前提にしないことです。運用要領は「最小限に抑えることが望まれる」と書いており、上限を満たしていることと望ましい状態であることとは別です。
経営者が明日できること
- 受け入れた社員が、送出国でいくら支払ったかを把握しているか確認する
- 把握していないなら、確認する手順を受入れの段取りに入れる
- 上限額の計算に使った「報酬の月額」が、所定内賃金の月額になっているか確かめる
- 誰が何を負担するかを書いた書面があるか確認し、無ければ作る
- 社内資料で上限の根拠を「二国間取決め」と書いている箇所があれば、「省令」に直す
来日前の費用は、会社の帳簿には出てきません。出てこないものは、意識して見に行かないと見えないままです。制度が上限を定めているのは、見えないところで負担が積み上がることを防ぐためです。
この記事で引いた原本
- 育成就労法 第9条第1項第11号(省令への委任)
- 育成就労法施行規則 第21条(上限額)
- 育成就労制度運用要領(「報酬」の意味、超過分の扱い、送出機関側の受領禁止)
制度は改正されます。この記事の内容は時点注記の日付時点のもので、実際の手続きにあたっては最新の条文と運用要領をご確認ください。
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