監理支援機関の選び方|面談で確認すべきこと
TalkJPN for Business
監理型で受け入れるなら、監理を担う法人とは長く付き合うことになります。それにもかかわらず、選び方の相談は多くありません。「紹介されたところにそのまま頼む」形で決まっていることがほとんどです。
しかし、監理を担う法人は選べますし、選ぶための手がかりも制度の側に用意されています。許可の基準が何を要求しているかを知っていれば、営業の説明を鵜呑みにせずに判断できます。
まず、「優良な監理支援機関を選ぶ」はできません
監理支援機関にも「優良」の区分があり、人数枠にも影響します。監理型で最大の枠に届くには、監理支援機関が優良であることが要件です。ところが、制度開始直後にこの区分で選ぶことはできません。運用要領に次のように書かれています。
○ 優良な監理支援機関の認定については、制度施行後の一定期間の業務の実施状況等に基づき評価を行いますので、施行日前申請及び制度施行直後の申請受付は行いません。優良な監理支援機関の基準の詳細等については、追って本運用要領にてお知らせします。
ここには3つのことが書かれています。
- 評価は、制度施行後の一定期間の業務の実施状況等に基づいて行う(実績が無ければ評価できません)
- 施行日前申請と、制度施行直後の申請受付は行わない(申請すらできません)
- 基準の詳細等は「追ってお知らせします」とされている(基準そのものがまだ存在しません)
したがって、制度が始まった時点で優良な監理支援機関は1つもありません。「うちは優良を目指しています」と言われても、いま比べる物差しはないため、別の物差しで選ぶことになります。その物差しを以下で説明します。
許可の基準を、そのまま質問の形に変えてください
監理を担う法人は、許可を受けて事業を行っています。その許可には基準があり、基準を満たしているかどうかは、こちらから聞けば確かめられます。聞くべきことは、大きく次の4つです。
- どの法人の形で許可を受けているか
- 許可を受けたあと、基準を満たし続けているか
- 中立性をどう担保しているか
- 監理支援責任者に誰を置いているか
どの法人の形で許可を受けているか
監理を担えるのは、営利を目的としない法人です。これは制度の前提で、株式会社が監理を担うことはできません。認められる法人の形も、あらかじめ列挙されています。商工会議所、商工会、中小企業団体、職業訓練法人、農業協同組合、漁業協同組合、公益社団法人、公益財団法人といった形です。
列挙にない形で許可を受けている法人もあります。その場合は、次の2つを立証して許可を得ています。
- 監理支援事業を行うことについて特別の理由があること
- 重要事項の決定と業務の監査を行う適切な機関を置いていること
このうち「特別の理由」は、ゆるい要件ではありません。過去に人材育成の支援に関する業務を行った実績があり、それを通年で、複数年度にわたって実施していることが求められ、実績は客観的な資料で示す必要があります。
この点は遠慮なく質問して構いません。「どの形で許可を受けていますか」「列挙外の場合、どういう実績で認められましたか」は、答えられて当然の問いです。答えに詰まる相手であれば、その時点で判断材料になります。
許可を受けたあと、基準を満たし続けているか
見落とされやすいのがこの点です。許可の基準は、許可の時点だけのものではありません。事業を行っている間に基準を満たさなくなれば、許可の取消しの対象になり得ると、運用要領は明示しています。「許可を持っている」というのは過去の時点の事実であり、今この瞬間を保証するものではないということです。
受入企業の側から見ると、これは実害のあるリスクです。監理を担う法人の許可が失われれば、その法人に監理を委ねている受入れは続けられなくなります。人はすでに働いており、生活もそこにあります。
対策は大掛かりなものではありません。
- 許可の状況を定期的に確認する
- 体制が変わったときに知らせてもらう約束をしておく
- 一社に完全に依存しない形を、少なくとも頭の中で持っておく
最初に「途中で使えなくなったら、どうなりますか」と聞いておくと、相手の備えの度合いが分かります。
中立性をどう担保しているか
最も重要でありながら、最も聞かれていない論点がこれです。制度の言葉で「監理支援」と呼ばれるものは、次の2つの行為を指します。
- 受入企業と外国人の間の雇用関係の成立をあっせんすること
- 受入企業に対して、育成就労の実施に関する監理を行うこと
紹介する役割と監視する役割が、同じ法人に与えられているわけです。紹介した相手を自分で監査することになるため、構造として素直ではありません。関係が続くほど、厳しく指摘しにくくなる力が働きます。
制度の側もこれを認識しています。運用要領は、監理を担う法人が中立的な業務の運営を行うことが難しい側面が存在することも事実です、と書いており、制度自身が構造的な難しさを認めた記述といえます。
そのために外部監査が義務付けられています。詳しくは外部監査人の記事で扱いますが、選ぶ側としては、「外部監査を誰に頼んでいるか」を聞けば十分です。答えの質で、次のように見分けられます。
- すぐに答えられる場合は、外部監査を実際に運用していると考えられます
- 「制度で決まっているので置いています」で止まる場合は、形だけの可能性があります
- 答えに困る場合は、中立性の担保を重く見ていないと考えられます
監理支援責任者に誰を置いているか
監理支援機関は、事業所ごとに監理支援責任者を選任しなければなりません。現場で自社と向き合うのは、この人です。条件は3つあり、申請の時点から許可を受けている間を通じて満たし続ける必要があります。
| 出典:育成就労制度運用要領 | 条件 |
|---|---|
| ① | 監理支援機関の常勤の役員または職員である |
| ② | その事業所に所属し、監理支援責任者の業務を適正に遂行する能力を有する |
| ③ | 過去3年以内に監理支援責任者に対する講習を修了している |
一方で、それ以外の資格は求められていません。原本は「それ以外に特段の資格等の取得が求められるものではありません」と明記しています。「うちの責任者は有資格者です」という説明は、制度上の要件とは関係がありません。
兼任には制限があります。事業所が複数ある監理支援機関では、同じ人を複数の事業所の監理支援責任者にすることはできません。ただし、常勤する事業所の業務を適時適切に行っていることを前提に、リモートワーク等で他の事業所の業務に一部従事することは妨げないとされています。
また、自社との関係によっては、もう1人必要になります。監理支援責任者が、監理支援を受ける育成就労実施者やその役職員でもある場合、その人はその実施者への監理支援に関与できません。配偶者や二親等以内の親族、社会生活において密接な関係を有する者も同様です。結果として、その事業所には監理支援責任者を複数選任することになります。
確認の仕方は簡単で、「自社を担当する監理支援責任者はどなたですか」「その方は他の事業所と兼任していませんか」と聞けば足ります。名前が出てこない相手は、選任が固まっていない可能性があります。
許可が取れているか、そのものを確かめる
受入れ開始(令和9年4月1日)に向けて、いま許可の申請が進んでいます。技能実習の監理団体の許可は監理支援機関の許可に引き継がれず、取り直しになります。
許可は6段階を踏み、事業開始予定の3か月前までの申請が推奨されています(不備があればそれ以上かかる、と原本は書いています)。「大丈夫です」という答えだけでは足りないので、どの段階まで進んだかを聞いてください。詳しくは監理団体はそのまま監理支援機関になれるのかの記事で扱っています。
費用の安さで選ぶと、何が起きるか
比較の軸が費用しかないと、いちばん安いところに決まってしまいます。しかし、監理を担う法人の仕事は紹介して終わりではありません。定期的に現場を見て、記録を作り、問題があれば指摘するという作業には、人手がかかります。
費用が極端に低いなら、どこかで手を抜いているか、別の名目で回収していると考えるのが自然です。徴収できる費用には区分があり、何にいくらかかるのかは説明を求めて構いません。比べるべきは総額ではなく、費用と「何をしてくれるのか」との対応です。
聞くことの一覧
初回の面談で、次のことを聞いてみてください。専門的な知識は要りません。
| 観点 | 聞くこと |
|---|---|
| 法人の形 | どの形で許可を受けていますか。列挙外なら、どんな実績で認められましたか |
| 許可の維持 | 許可の状況はどう確認できますか。体制が変わったら知らせてもらえますか |
| 中立性 | 外部監査は誰に頼んでいますか。どのくらいの頻度で来ますか |
| 実務 | 現場にはどのくらいの頻度で来ますか。誰が来ますか |
| 費用 | 何に対する費用ですか。区分ごとに教えてください |
| 有事 | 受入れがうまくいかなくなったとき、何をしてもらえますか |
| 責任者 | 自社を担当する監理支援責任者はどなたですか。他の事業所と兼任していませんか |
| 許可 | 監理支援事業の許可は、いま申請のどの段階ですか |
見るべきは、答えの正しさよりも答え方です。制度を理解している相手は、分からないことを分からないと言い、根拠のある話と見込みの話を分けて説明します。
自社の側に必要なもの
相手を選べるかどうかは、こちらが判断の軸を持っているかで決まります。その軸は、監理を委ねても自社に責任が残ると分かっているところから生まれます。責任の置きどころについては受入れで引き受けることの記事を、職場の側に置く人については三つの役割の記事をご覧ください。
当社が確認できていないこと
- 優良な監理支援機関の基準は、原本にまだ存在しません。「追って運用要領でお知らせします」という段階で、基準が出れば、選び方の物差しは1つ増えます
- 監理支援機関の許可の欠格事由(法第26条)は、当社の台帳に抽出できていません。過去の違反がどう影響するかは、この記事では書けません
- 許可申請の書類の中身(申請書の記載事項と添付書類)も未抽出です
- 監理支援責任者に対する講習を定める告示は未取得です。運用要領は「主務大臣が告示で定めるもの」としか書いていません
- 監理支援費の区分ごとの上限は、別の記事で扱っています。この記事では「区分ごとに聞く」という手順だけを書いています
経営者が明日できること
- 上の一覧を、面談の質問票として印刷する。そのまま持って行けば、専門的な知識が無くても会話が噛み合います。
- 複数の相手に同じ質問をする。答えの違いが、比べる材料になります。
- 費用は区分ごとに書き出して並べる。総額だけで比べると、何が含まれていないかが見えません。
- 「優良かどうか」を選定基準から外す。いまは存在しない区分なので、基準が公表されたら戻してください。
監理を担う法人は選べますし、その手がかりは許可の基準をそのまま質問に変えることで手に入ります。制度の細部は改正で動きますが、紹介と監視を同じ相手が担うという構造は動きません。その構造に自覚的な相手を選べているかどうかが、長い付き合いの質を決めます。
制度は改正されます。この記事の内容は時点注記の日付時点のもので、実際の判断にあたっては最新の条文と運用要領をご確認ください。
この記事で引いた原本
- 育成就労制度運用要領(許可基準のうち法人形態・外部監査・中立性、監理支援責任者の①〜③と兼任・利益相反、許可の流れと3か月前の推奨、優良な監理支援機関の基準が未公表であること)
- 育成就労法 第2条第10号(監理支援があっせんと監理の2つからなること)
- 育成就労法施行規則 第69条(監理支援責任者)
いずれも法令の原本および制度の運用要領から引用しています。制度は改正されますので、実際の判断にあたっては、最新の条文と要領をご確認ください。
受入れ体制のご相談はお問い合わせからどうぞ。
- #費用と手続き
- #監理支援機関
- #受入れ設計
- #制度