定着

受入れが失敗するパターンと、その共通点

TalkJPN for Business

育成就労の受入れが止まるとき、原因が外国人の側にあるとは限りません。育成就労計画の認定基準には、外国人の受入れとは直接関係のない、自社の状態を見る項目がいくつも入っており、それは認定を取るときだけの話でもありません。

このうち4つは、条文の書き方までよく似ているため、まず表にまとめておきます。

制度が見ているのは、自社の4つの状態です

出典:育成就労法施行規則 第15条第10号ほか 何を見るか 期間
一 労働・社会保険・租税に関する法令の遵守 書類は直近2年分・24か月分
二 労働関係法令の違反(欠格事由) 5年間受入れが認められないこととなり得る
三 行方不明者を発生させていないこと 過去1年以内
四 非自発的離職者を発生させていないこと 過去1年以内

いずれも日本語教育や受入れ体制の話ではなく、会社の運営そのものに関わる項目です。

保険料と税が納まっていない

1つめは法令の遵守です。条文はたった1行しかありません。

規則第 15 条 (略) 十 単独型育成就労に係るものである場合にあっては申請者が、監理型育成就労に係るもので ある場合にあっては申請者及び監理支援機関が次のいずれにも該当すること。 ハ 労働、社会保険及び租税に関する法令の規定を遵守していること。

条文はこれだけで、何をもって遵守とするかは解説の側に書かれています。この基準が掛かる相手は2者あり、単独型なら申請者、監理型なら申請者と監理支援機関の両方です。相手方に未納があっても、自社の申請は通りません。

提出する書類は、区分ごとに次のように決まっています。

出典:育成就労制度運用要領 出すもの
労働保険の適用事業所 労働保険料等納付証明書(未納なし証明)
健康保険・厚生年金保険の適用事業所 保険料領収証書の写し(申請日の属する月の前々月までの24か月分全て)又は社会保険料納入確認書(同期間)
同上でない場合 事業主本人の医療保険の資格情報の写し等、国民健康保険料(税)納付証明書(直近2年度分)、国民年金保険料領収証書の写し(24か月分全て)等
租税(法人) 国税の納税証明書(その3)、法人住民税の納税証明書(直近2年分)
租税(個人事業主) 国税の納税証明書(その3。相続税・贈与税を含む)、個人住民税の納税証明書(直近2年分)

個人事業主の場合は、事業とは無関係に見える相続税と贈与税まで対象に入ります。

未納それ自体では、止まりません

誤解されやすいところですが、未納があっただけで止まるわけではありません。同じ趣旨の記述が、労働・社会保険・租税の3か所に置かれています。

○ 社会保険関係法令を遵守しているとは、具体的には次の場合をいいます。なお、社会保険料の 未納があった場合であっても、機構地方事務所・支所の助言・指導に基づき保険料を納付した 場合には、社会保険関係法令を遵守しているものと評価されますので、未納となっている保険料 を納付してください。

出典:育成就労制度運用要領 救済の言い方
労働 労働保険料の未納があった場合でも、機構地方事務所・支所の助言・指導に基づき納付手続を行った場合は遵守していると評価される
社会保険 社会保険料の未納があった場合でも、同じく助言・指導に基づき納付した場合は遵守していると評価される
租税 納付すべき税に未納があった場合でも、機構の助言・指導に基づき納付した場合は遵守していると評価される

止まるのは、指摘を受けても直さなかったときです。猶予制度(分割納付)の許可を受けている場合や、国民年金保険料の免除制度の適用を受けている場合も、「納付」に含まれます。

ただし、1つだけ救済のない未納があります

租税の段落の末尾に、例外が置かれています。

○ 租税関係法令を遵守しているとは、具体的には以下の場合をいいます。なお、納付すべき税に 未納があった場合であっても、機構の助言・指導に基づき納付した場合には、租税関係法令を 遵守しているものと評価されますので、税務署等において相談の上、必要な手続を行ってくださ い。また、対象となる育成就労計画の認定申請に係る外国人から特別徴収をした個人住民税 を、育成就労実施者が納入していないことに起因して、個人住民税の未納があることが判明した 場合には、租税関係法令を遵守しているものとは評価しません。

出典:育成就労制度運用要領 扱い
一般の未納 助言・指導に基づき納付すれば遵守と評価される
当の外国人から特別徴収した個人住民税を納入していないことに起因する未納 遵守しているものとは評価しない

本人の給与から預かった税だけは救済がなく、資金繰りの問題ではなく預かり金の問題として扱われています。

労働関係法令の違反は、5年効きます

2つめは労働関係法令の違反です。運用要領は次のように書いています。

○ 特に労働関係法令に違反する行為は、法第 10 条に規定する欠格事由の対象となり、5年間育 成就労外国人の受入れが認められないこととなり得ることから、法令を遵守した受入れを行うよう 留意してください。

認定基準に適合しないことと、欠格事由に当たることとでは、重さが違います。

出典:育成就労制度運用要領・育成就労法 第10条 効き方
規則第15条第10号ハへの不適合 その申請が通らない
法第10条の欠格事由(労働関係法令違反) 5年間、育成就労外国人の受入れが認められないこととなり得る

この「5年間」は次の申請にかかわる話で、いま手元にある計画が止まるだけでは済みません。

行方不明者を出している

3つめは行方不明者です。

イ 過去一年以内に、申請者又は監理支援機関の責めに帰すべき事由により育成就労外
 国人の行方不明者を発生させていないこと。

対象は過去1年以内で、かつ「責めに帰すべき事由により」発生させたものに限られますが、効き方は重くなっています。

○ 育成就労外国人を雇用している間に育成就労実施者又は監理支援機関の責めに 帰すべき事由により行方不明者を発生させた場合には、本規定に反するものとして育 成就労計画の認定の取消しの対象となります。

いま持っている認定が取消しの対象になるということです。判定の仕方にも特徴があり、いなくなった理由ではなく、いなくなった時点で自社が違反していたかどうかで決まります。詳しくは失踪を防ぐために受入れ前にできることの記事で扱っています。

非自発的離職者を出している

4つめは非自発的離職者です。

定に反するものとして育成就労計画の認定の取消しの対象となります。

過去1年以内に、育成就労外国人に従事させる業務と同種の業務に従事していた労働者を非自発的に離職させていないこと、という基準で、こちらも認定後に発生させれば取消しの対象になります。除外される類型が4つあり、そこに当たらない離職者を1名でも出すと基準に適合しません。詳しくは非自発的離職者の要件の記事で扱っています。

4つに共通しているのは、判定の形です

4つを並べてみると、同じ形をしていることが分かります。

出典:育成就労法施行規則・育成就労法・育成就労制度運用要領 期間 帰責性 認定後も効くか
法令の遵守(保険料・税) 直近2年分・24か月分の証明 助言・指導に従えば遵守と評価 指導・処分を受けたら機構に申し出る
労働関係法令の違反 5年 違反行為そのもの 欠格事由
行方不明者 過去1年以内 責めに帰すべき事由によるものに限る 認定の取消しの対象
非自発的離職者 過去1年以内 除外4類型に当たらないもの 認定の取消しの対象

共通点は3つあります。

  1. どれも「過去の一定期間」で区切られます。現時点で問題がないことだけでなく、遡って何も無かったことが求められます
  2. どれも、直せば戻るものと戻らないものに分かれます。未納は直せば遵守と評価されますが、出してしまった行方不明者や非自発的離職者は消えません
  3. どれも、認定を取ったあとも効き続けます。申請時に満たしていればそれで終わり、というわけにはいきません

「受入れの準備」と聞いて思い浮かべるものは、ここに1つも入っていません。宿舎、日本語教育、指導員の選任は別の項目で、この4つは外国人を受け入れる前から自社にあった状態を見ています。

もう1つの共通点として、相手方の状態も効きます

法令の遵守も行方不明者も、監理型では「申請者及び監理支援機関」が対象です。自社に問題がなくても、監理支援機関の側に未納や行方不明者があれば基準に適合しません。監理支援機関の選び方は監理支援機関の選び方の記事で扱っています。

また、会社を作り替えても免れることはできません。

○ 行方不明者を発生させた育成就労実施者又は監理支援機関が、本基準に適合し ないことを免れるために別機関を作った場合は、実質的に同一の機関であると判断し て、当該別機関も行方不明者を発生させた機関として取り扱うことがあり得ます。

5つめの失敗は、書類が間に合わないことです

基準の話ではありませんが、実務では書類の取得が間に合わないこともよく起きます。

○ 社会保険料納入確認書は、年金事務所に申請してください。被保険者記録照会回答票及び被 保険者記録照会(納付Ⅱ)は、日本年金機構の納付記録交付担当係(郵送申請・交付)又は年 金事務所(窓口申請・郵送交付)へ申請してください。被保険者記録照会回答票及び被保険者 記録照会(納付Ⅱ)の交付を急ぐ場合は、最寄りの年金事務所へ相談してください。

出典:育成就労制度運用要領 申請先
労働保険料等納付証明書(未納なし証明) 都道府県労働局(受付・交付とも郵送。返信用切手を貼った返信用封筒が必要)
社会保険料納入確認書 年金事務所
被保険者記録照会回答票・被保険者記録照会(納付Ⅱ) 日本年金機構の納付記録交付担当係(郵送申請・交付)又は年金事務所(窓口申請・郵送交付)

原本は「利用日まで余裕をもって」と書き、交付を急ぐ場合は最寄りの年金事務所へ相談するよう求めています。取得に時間がかかることが前提になっているわけです。

一方で、一度提出したものは条件つきで使い回せます。

・ 育成就労計画の認定申請時において、上記の証明資料を提出している場合は、同一年度内に おける育成就労計画の認定申請時において改めて上記資料を提出する必要はありませんが、年 度をまたいで申請をする場合には、各種証明資料の提出が必要となります。 ・ 同一年度内に地方出入国在留管理局における「特定技能」の申請や届出等において上記の資 料を提出している場合、その写しを育成就労計画の認定申請時に転用することも差し支えありま せんが、証明している対象期間が不足している場合は、別途、不足している期間分の証明資料を 取得し、提出する必要があります。例えば、育成就労計画の認定申請において過去2年分の証明 資料を求めている場合で、「特定技能」の申請・届出等で過去1年分の証明資料を使用した場 合、育成就労計画の認定申請においては、不足している期間の証明資料も取得の上、提出する 必要があります。また、地方出入国在留管理局では、「特定技能」の申請・届出において提出済み の証明資料の写しの交付や返却は行いませんので留意してください。

出典:育成就労制度運用要領 扱い
同一年度内に提出済み 改めて提出する必要はない
年度をまたぐ 提出が必要
同一年度内の「特定技能」の申請・届出で提出済み 写しを転用しても差し支えない
ただし対象期間が不足している 不足分を別途取得して提出

なお、提出した書類は返ってきません。「地方出入国在留管理局では、『特定技能』の申請・届出において提出済みの証明資料の写しの交付や返却は行いません」と書かれています。

当社が確認できていないこと

  • 「労働関係法令に違反する行為」のうち、どこまでが法第10条の欠格事由に当たるのかは、この箇所に書かれていません。運用要領は「特に労働関係法令に違反する行為は、法第10条に規定する欠格事由の対象となり」と書くにとどまります
  • 機構の助言・指導が、いつどういう形で行われるのかは原本にありません。「助言・指導に基づき納付した場合」という言い方があるだけです
  • 労働基準法・健康保険法・厚生年金保険法・国民年金法・各税法の条文には到達していません。運用要領が名前で参照しているだけです
  • 納税証明書(その1)(その3)の様式・記載事項は取得できていません
  • この記事は認定基準の側だけを扱っており、認定の取消事由そのもの(法第16条)や、行政処分の手続には到達していません
  • 実際にどのパターンで止まる例が多いのかという統計は、当社にありません。この記事は、原本が基準として書いている項目を並べたものです

経営者が明日できること

  1. 労働保険・社会保険・税の未納が無いかを、先に自社で確かめる。未納があっても直せば遵守と評価されますが、申請の直前に分かると間に合いません。
  2. 外国人本人から特別徴収した個人住民税の納入だけは、別枠で確かめる。ここだけは救済がありません。
  3. 証明書の取得にかかる日数を、申請スケジュールに入れる。郵送でのやりとりが前提で、返信用封筒も必要です。
  4. 過去1年以内の離職者を、業務の種類ごとに並べる。非自発的離職者が1名でもいれば、基準に適合しません。
  5. 監理支援機関の側の状態も確かめる。法令の遵守も行方不明者も、監理型では相手方が対象に含まれます。

受入れが失敗するのは、たいてい外国人が来る前です。制度が見ているのは受入れの準備ではなく、準備を始める前から会社にあった状態だからです。

制度は改正されます。この記事の内容は時点注記の日付時点のもので、実際の判断にあたっては最新の条文と運用要領をご確認ください。

この記事で引いた原本

  • 育成就労法施行規則 第15条第10号ハ(労働、社会保険及び租税に関する法令の規定の遵守)
  • 育成就労法施行規則 第15条第10号イ(行方不明者の発生に関するもの)
  • 育成就労法施行規則 第15条第1項第10号ロ(非自発的離職者の発生に関するもの)
  • 育成就労法 第10条(認定の欠格事由)
  • 育成就労制度運用要領(確認対象書類、助言・指導による救済、特別徴収した個人住民税の例外、欠格事由との関係、証明書類の申請先と使い回し、別機関を作った場合の取扱い)

いずれも法令の原本および制度の運用要領から引用しています。制度は改正されますので、実際の手続きにあたっては、最新の条文と要領をご確認ください。

現場に合わせた日本語教育の設計について

業務の流れに即した日本語教育の設計について、ご相談を承っています。

お問い合わせはこちら

本記事は2026年9月時点の法令・行政資料に基づきます。

  • #定着
  • #受入れ設計
  • #経営判断
  • #現場運用