制度

過去の違反は、受入れにどこまで響くのか|欠格事由の読み方

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「うちは受け入れられる会社なのか」

体制や人数枠を考える前に、確かめておくべきことがあります。過去の違反があると、そもそも計画の認定を受けられないという仕組みがあるからです。

この仕組みは、受入れを検討し始めた時点では話題に出ず、監理を担う法人との面談でも、たいていは聞かれません。しかし申請の段階で誓約書を出すことになるので、そこで初めて気づくと手戻りになります。

見るのは「何をしたか」ではなく「誰が、いつ、どう決着したか」

この仕組みを読むときは、次の3つの点を押さえておくと整理しやすくなります。

  • 誰が対象か。会社だけでなく、役員も対象になります
  • いつから数えるか。違反した時点ではなく、刑や処分が終わった時点から数えます
  • どう決着したか。送検されただけか、刑が確定したか、執行猶予が明けたかで扱いが変わります

「昔こういうことがあった」という記憶だけでは判断できず、書類で確かめる必要があります。

4つの観点でできている

制度は、対象を4つの観点に分けて並べています。

観点 ざっくり言うと
刑罰を受けたこと 一定の法律に違反して刑を受けた
処分等を受けたこと 計画の認定を取り消された、または不正・不当な行為をした
行為能力・役員の適格性 破産して復権していない、役員に該当者がいる など
暴力団排除 暴力団員等である、またはその支配を受けている

この4つは互いに独立しており、どれか1つに当たれば認定を受けられません。点検も、4方向から行う必要があるということです。

自社の話であると同時に、人の話である

いちばん見落とされやすいのは、法人が対象になるのは法人自身が違反した場合だけではない、という点です。役員のうちに該当する人がいれば、法人が対象になります。未成年者が役員にいて、その法定代理人が該当する場合も同じです。

そのため、役員の一人ひとりについて確かめる必要があります。申請では役員の住民票の写しを出すことになっていますが、これは形式的な添付書類ではなく、この点検のための書類です。

「役員」は登記で決まらない

対象になる役員は、登記に載っている人だけではありません。制度は、相談役・顧問その他どんな名称であっても、法人に対して同等以上の支配力があると認められる人を含めています。

これは実務上の重みが大きい論点です。創業者が役職を退いて相談役に就いている、実質的な決定権を持つ人が登記に載っていない、といった形は珍しくありません。形式だけで線を引くと、後から食い違いが生じます。

なお、育成就労に関する業務の執行に直接関与しない役員については、住民票の写しに代えて申告書で足りる扱いがあります。ただし、後の調査で実際は関与していたと分かれば、認定の取消し等につながります。手間を省くための抜け道として使えるものではありません。

外国人と関係のない違反も入る

「育成就労で何か問題を起こしたわけではないから関係ない」と考えると、判断を誤ります。

対象になる法律には、労働基準法・最低賃金法・労働安全衛生法といった労働基準関係法令が含まれます。制度は、その違反が外国人に対するものか日本人に対するものかを問わないと明示しています。日本人社員に対する残業代の不払いで送検され刑が確定していれば、それが受入れの可否に効いてくるわけです。社内の労務が、外国人の受入れの前提条件になっている構造だといえます。

社会保険・労働保険の事業主としての義務に違反した場合も、同じ側に並んでいます。

刑は「終わってから」数え始める

期間は、違反した日からではなく、刑の執行が終わった日、または執行を受けることがなくなった日から起算します。

これには例外があります。執行猶予の言渡しを受けた人が、取り消されずに猶予期間を経過した場合は、その時点で直ちに外れ、猶予が明けてからさらに待つ必要はありません。大赦・特赦で刑の言渡しの効力を失った場合も同様です。

一方で、送検されて刑が確定した場合の「不正又は著しく不当な行為」の期間は、行為の時点で判断するとされています。数え始めの基準が観点によって違うので、自社の事案がどちらの側にあたるかを確かめてください。

刑を受けた場合の期間は、時点注記の日付時点で5年です。対象になる法律は15本以上にわたって政令が列挙しており、ここに書ききれる量ではありません。自社の事案が当たりそうなら、条文にあたるか、監理を担う法人に確かめてください。

技能実習でのことは引き継がれる

いま技能実習生を受け入れている会社は、この点を確かめておいてください。技能実習法の規定で罰金刑を受けた場合や、技能実習計画の認定を取り消された場合は、育成就労の側でも同じ扱いになります。制度が変わったからといって区切り直されることはなく、「前の制度の話だから」と考えていると、申請の段階で止まってしまいます。

共同で実施していた場合、責任は切り分けられる

一方で、救いのある規定もあります。複数の法人が共同で実施していて、一方の法人の法令違反で認定が取り消された場合、その事実を発生させたのが専らA社であってB社の責めに帰すべきとは認められないときは、B社は対象になりません。

判断の基準は「自己の責めに帰すべき事由により、その事実を発生させたものではないと認められること」です。自動的に免れるのではなく、認められる必要があるので、記録が残っているかどうかが効いてきます。

自社を点検する順番

  1. 役員の範囲を確定します。登記に載っている人だけでなく、実質的な支配力を持つ人を含めます
  2. その一人ひとりについて、刑や処分の有無を、記憶ではなく書類で確かめます
  3. 法人としての労務・社会保険の履歴を確かめます。外国人と無関係な違反も対象です
  4. 技能実習での処分の有無を確かめます。これも引き継がれます
  5. 当たりそうなものがあれば、決着の時点を確かめます。執行猶予が明けていれば外れている場合があります

この順で見ていくと、確かめるべき書類が具体的に決まります。誓約書に署名する前に済ませておきたい作業です。

経営者が明日できること

  1. 役員の一覧を作り、登記に載っていないが実質的な決定権を持つ人を書き足してください。点検の対象範囲はここで決まります。
  2. 労務・社会保険の是正勧告や送検の有無を、総務に確認してください。期間は上に書いた年数をさかのぼり、外国人が関わっていない案件も含めて聞きます。
  3. 心当たりがあるものについて、決着の時点が分かる書類を探してください。いつ終わったかが分からないと、判断できません。

この仕組みは、受入れを妨げるためではなく、制度を守ることが期待できない者に人を預けないために置かれています。そのため点検の観点は、自社の労務が健全かどうかという問いとほぼ重なります。

受入れの体制づくりで自社に残る責任については受入れで引き受けることの記事を、職場に置く人については三つの役割の記事をご覧ください。

制度は改正されます。この記事の内容は時点注記の日付時点のもので、実際の手続きにあたっては最新の条文と運用要領をご確認ください。

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本記事は2026年9月時点の法令・行政資料に基づきます。

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